ご挨拶 GREETING

心臓大動脈センター長 笠原 啓史

 近年の血管内治療の進歩により、循環器系疾患の観血的手術と血管内治療の垣根がなくなってきており、両治療法の有機的結合を目指して、2013年に心臓及び大動脈や末梢血管治療部門をセンター化し心臓大動脈センターを設立しました。循環器内科心臓血管外科血管外科放射線診断科、さらに救急科及び多職種が一つのチームを作り、互いに協力し迅速かつ最も適切な治療法を選択して診療を行っております。

 様々な状況の中で、常に最善の判断を下すことは決して容易ではありません。心臓大動脈センターでは、患者さんの個別の状況に応じ、複合科医師による連携で、どの治療方法が最良なのかを誠心誠意探求しています。患者さんが元気に退院されることが、当センターの存在意義です。複数医師による連携のもと、看護師、薬剤師、臨床工学技士、理学療法士、ケースワーカーなど多職種による医療チームが全力で患者さんをサポートしています。

 以下にセンター内各科の特徴をご紹介します。

 循環器内科は、24時間体制で急性心筋梗塞や狭心症などの冠動脈病変に対するステント留置術などの血管内治療、心不全や不整脈疾患に対する内科的治療やペースメーカー手術などを担当しています。

 心臓血管外科は、冠動脈疾患に対する冠動脈バイパス術、大動脈解離に対する胸部大動脈手術、胸部大動脈瘤に対するステントグラフト内挿術、弁膜症に対する弁形成術・弁置換術、自己心膜による大動脈弁再建術などを中心に緊急手術にも対応しています。

 血管外科は腹部大動脈瘤や閉塞性動脈硬化症、末梢血管疾患に対する血管内治療や外科的血行再建(バイパス術など)を行います。

 放射線診断科は、体幹部の動・静脈の血管形成術、血栓除去術やカテーテルによる塞栓術のエキスパートです。交通外傷など夜間緊急手術にも対応しています。特殊な疾患に対する冠動脈肺動脈瘻塞栓術や肺動脈血栓除去術は循環器内科と合同で、下肢静脈の深部静脈血栓症に対するカテーテル血栓溶解療法などは血管外科と合同で、センター内各科と協力し実施しています。

 また当院では、2017年4月から救命救急センターを開設しました。救急科は「断らない救急医療」をモットーに年間8,000~9,000台の救急車を受け入れ、初期対応と診断・治療を行い、各専門科と協力して入院加療しています。救急科医師も放射線診断科や血管外科医師と協力し外傷による血管損傷に対するカテーテル治療等を担当しています。また心室細動などの心肺停止例に対しては、救命救急室 (ER)でX線透視下にPCPS(経皮的心肺補助装置)を挿入し血行動態を安定させた後、循環器内科に引き継ぎ冠動脈の血行再建の専門治療を行っています。

 診断や血管内治療に必要な医療機器として、320列と64列CT、救命救急室と手術室にあるCアーム透視装置、血管撮影装置とCTを同時に備えたIVR(インターベンショナル・ラジオロジー、画像下治療)-CT室、2方向同時撮影可能な心臓血管撮影装置を備えています。

 以上のように、経験豊富な医師と最新設備が完備されています。実際の医療には医師のみならず、看護師、薬剤師、放射線科技師、臨床検査技師、臨床工学士(ME)、理学療法士、ケースワーカーなどによる積極的な協力体制が不可欠ですが、当センターでは有機的なチームワークが完成しています。

 平塚市民病院心臓大動脈センターは、患者さんの健康を守ることを第一に考え、最良な治療方法を誠心誠意探求しています。

 地域の先生方には、担当診療科が分かりにくい複雑な心臓・大血管の病変も、当センターでは最良の治療法を提供できるように努めていますので、医師直通のホットラインのご活用と共に、窓口はどの科の医師であっても構いませんのでお気軽にご相談ご依頼ください。

                                                               心臓大動脈センター長 笠原 啓史

認定資格医学博士
日本外科学会専門医・指導医
心臓血管外科専門医・修練指導医
日本循環器学会専門医
胸部ステントグラフト実施医・指導医
腹部ステントグラフト実施医・指導医
日本胸部外科学会評議員
日本血管外科学会評議員
慶応義塾大学医学部客員講師
専門分野冠動脈疾患、弁膜症、胸部大動脈疾患、低侵襲心臓手術
卒業年H8年