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整形外科

整形外科部長兼リハビリテーション科部長

加藤 創太

整形外科では、骨、関節、筋肉、脊髄・末梢神経などの運動器の疾患を扱います。運動器の異常である関節疾患および骨折は、要介護・要支援状態になる理由の2割以上を占めます。足腰などの運動器の弱りは、要介護・要支援状態に直接つながります。
 近年、いわゆる「寿命」に対して、日常生活に健康上の制限がなく自立して元気に過ごせる期間を指す「健康寿命」という概念が重視されています。厚生労働省の推計では、「非・健康寿命」に相当する期間は平均で約10年にも及びます。同省が進める「健康日本21(第2次、2013~2022)」では、この健康寿命の延長が目標の1つに掲げられています。
 以上を踏まえ、当科では健康寿命の延長という目標をもって適切に治療することを心掛けています。患部のみを対象とするのではなく、その方の生活を回復・維持します。ご高齢の方はもちろんのこと、若年者の外傷でも数ヵ月後の結果だけではなく数十年後のことも考えた治療を図ります。

当科の受診にあたって

当科は「完全紹介制」のため、初診での受診は、他院からの紹介状をお持ちの方に限らせていただきます(医学的に緊急診療が必要と判断された場合を除く)。
また、再診は「完全予約制」のため、予約がなく再度来院された患者さんは、次回の予約をお取りいただくか、他の保険医療機関での受診をお願いすることがあります。

診療内容

  1. 対象疾患
    整形外科全般にわたり幅広く対応しています。
    外傷性疾患 四肢 鎖骨・上腕骨・前腕骨・手の骨折、手の腱損傷、肩腱板断裂
    大腿骨(大腿骨頸部・転子部骨折を含む)・下腿骨・足関節・足の骨折
    関節脱臼、靭帯損傷、半月板損傷、アキレス腱断裂
    挫創・切創、捻挫、打撲、スポーツ傷害
    体幹 脊椎圧迫骨折、骨盤骨折、肋骨骨折
    慢性疾患 上肢 肩関節周囲炎(五十肩)、テニス肘、肘部管症候群、
    手根管症候群、ばね指、腱鞘炎、神経障害、変形性肩関節症
    下肢 変形性股関節症・膝関節症、扁平足、外反母趾、アキレス腱周囲炎
    体幹 急性腰痛(ぎっくり腰)、腰部椎間板ヘルニア(坐骨神経痛)、腰部脊柱管狭窄症
    頚椎症、脊髄症
    全身性疾患 関節リウマチ
    代謝性疾患 骨粗鬆症、痛風、偽痛風
    感染性疾患 軟部組織感染症、感染性関節炎、骨髄炎
    骨軟部腫瘍  
    その他 (糖尿病性)壊疽、人工関節置換(股・膝関節)、義肢・装具
  2. 手術
    当院では救命救急センターが設置され、多くの外傷患者を受け入れています。そのため、脊椎・骨盤・四肢の外傷手術が多いのが特徴です。
    一方、高齢化社会に対応して、脊椎・脊髄疾患や関節の変性疾患に対する手術も積極的に行っています。
    総数:1,186例(令和5年度)
     脊椎手術104例・人工膝関節置換術33例・人工股関節置換術33例・人工肩関節置換術4例を含む
  3. 当院のリハビリテーション部門、および地域の病院とも密に連携し、充実したリハビリテーションによって早期の社会復帰を目指します。
  4. 腰部頸椎管狭窄症、腰椎椎間板ヘルニアなどの腰椎疾患や頚椎症性脊随症などの頸椎疾患については脊椎外科医が内視鏡手術も含めた専門性の高い診療を行っています。
  5. 靭帯損傷などのスポーツ外傷を含む膝関節外科全般と、人工関節(主に膝関節、股関節)に関連した疾患については、関節外科医が専門性の高い診療を行っています。
  6. 変形性肩関節症、肩腱板断裂などの肩関節疾患については肩関節外科医が関節鏡手術を含めた専門性の高い診療を行っています。
  7. まれな疾患については、慶應義塾大学整形外科学教室のスペシャリストと連携して最良の方針を図ります。

専門外来

・肩関節外科診療   初診日:木曜日   担当:歌島 淳  

「肩が痛い」という悩みは、非常に頻度が高い相談です。高齢の方はもちろんのこと、若い方も意外と悩まされていることが多いと思われます。その中には頸椎の神経由来のものや、そもそも肩関節ではないもの、肩こりのようなものも含まれます。肩関節専門医として治療としてお手伝いができるものは「四十肩・五十肩」、「腱板断裂」、「関節唇損傷」、「反復性肩関節脱臼」、「変形性肩関節症」などになります。これらの中でも頻度の高い「四十肩・五十肩」、「腱板断裂」についてこの後で説明させていただきます。

なお、どのような痛みで受診するべきかわからないことも多いと思います。その場合は、まずお近くの整形外科クリニックをご受診ください。その際に当院への受診希望をお伝え頂けましたら当院へご紹介してくださると思います。

「四十肩・五十肩」は、肩関節の周りに炎症が起こり、スムーズに動かなくなる症状のこと
 このような呼ばれ方は一般の方にわかりやすいように作られた「俗称」という位置づけです。実際の名称としては肩関節周囲炎という診断名となります。しかし、この肩関節周囲炎という名前自体も、肩関節とその周りの炎症で疼痛が生じているというものです。その中にはさまざまな原因がありますが、原因が何であれ治療方法は大きく変わらないため、一般診療の中では細分化して診断する必要がなく、広く使われています。

「四十肩・五十肩」などと言われているのは、40歳代から50歳代に多い肩の痛みという意味でしかありません。当然、同様の状況は他の年代の方にも生じます。疼痛の原因は様々であっても、概ねの経過と治療方針は変わりありません。炎症期→拘縮期→回復期という流れで進んでいきます。実は、このとおりに進まないものも多くあり、拘縮が進み可動域制限と疼痛が残存してしまうことも少なくありません。また、拘縮が回復するまでに数年を有することもあります。拘縮による疼痛が強くリハビリが進まないものや拘縮が完成してしまったものについては、関節鏡手術で授動術を施行し、癒着を剥離することでリハビリを進ませる方法があります。癒着が進んでいる場合は、リハビリ加療のみでは拘縮の解除は難しいことも少なくありません。また、拘縮が完成してしまっている場合は癒着剥離のみではなく、硬くなり動きを阻害している関節包を部分的に切離することもあります。

「四十肩・五十肩」であれば、炎症期は安静にして炎症が落ち着くのを待ち、拘縮期は疼痛が増悪しないよう注意深くマイルドに運動療法を行い、スムーズに回復期に繋げていくことが治療の流れとなります。拘縮期で滞り改善がスムーズでなければ手術加療を検討することとなります。

「四十肩・五十肩」の原因は、前に述べたようにいくつもあります。具体的には腱板という、インナーマッスルに炎症を起こした腱板炎や、力こぶの筋肉である上腕二頭筋の一つの腱に炎症を起こした上腕二頭筋長頭腱炎、腱板疎部という肩の前方の膜や靭帯で構成された部位に炎症が起こる腱板疎部炎などがあります。

肩関節周囲炎とは以下に起こる炎症のことをいいます。

  • 腱板の筋に炎症が生じた腱板炎
  • 上腕二頭筋の一つの腱に炎症が生じた上腕二頭筋長頭腱炎
  • 腱板疎部に炎症が生じた腱板疎部炎

これらの全てが「肩関節周囲炎」という診断でまとめられてしまいます。狭い意味での典型的な四十肩・五十肩は癒着性肩関節包炎という病名があります。これはかなり原因が絞られて、関節包という肩関節を包む膜に炎症が起こり、最終的には癒着して厚く固くなってしまう状態です。この癒着性肩関節包炎が、肩の強い痛みの後に、可動域が狭くなる、つまり、肩が上がらないとか回らない状態に至る典型的なケースだと考えています。

四十肩・五十肩の原因は、このように肩関節自体に炎症肩の関節の周囲に炎症により関節包が癒着していることと説明しています。

なぜ四十肩・五十肩のような炎症が起こったり、癒着が起こってしまうのか?という原因について知りたい方は多いと思いますが、その原因は複雑です。

複雑で、かつ、明らかでない部分ですから、いろんなことをおっしゃる先生や治療家の方がおられます。この場でご理解いただきたいのは、「原因は明らかではない」ということと、「肩甲骨の動きの関係はあると考えられる」ということ、くらいです。他にも骨盤が原因だとか、足が原因だとか、いろいろな説を唱えられる方がおられるので困惑してしまうかもしれません。

しかし、ご安心ください。四十肩・五十肩の治療自体はそれらの原因を改善しないと治らないものではありません。肩に起こっている炎症や癒着による拘縮などを改善すること自体が根本治療になります。あくまで治療は肩に対して行うことで症状は改善します。原因を究明することで、発症しづらい環境は作れると思います。しかし、発症し痛みが生じている中で、肩の治療を度外視して骨盤体操や歩き方の訓練をしても肩の症状は改善しないと思われます。それらの原因はご年齢とともに改善するわけでもないと思われますが、加齢によって増悪するという話は聞かないと思います。つまり、根本原因が改善されなければ、いつか60歳、70歳と年齢を重ねるにつれて六十肩や七十肩になってしまうという類いの疾患ではないということです。

この四十肩・五十肩の典型的な症状について解説します。

四十肩・五十肩の主な症状

  • 腕を上げると痛みが出る、硬くて動かしにくい
  • 腕を背中に回すと痛みが出る、硬くて動かしにくい
  • 肩を開くと痛みが出る、硬くて動かしにくい
  • 特に肩の前に痛みが出ることが多い

狭い意味での四十肩・五十肩は癒着性肩関節包炎という病名で示されると説明しましたが、その炎症や癒着が起こる関節包は肩を全周性に取り囲んでいます。つまり、肩の前にも下にも後ろにも上にもあるわけです。ですから、典型的な症状の特徴は「全方向性の症状」と考えています。つまり、上に上げようとしても、腕を背中に回そうとしても、肩を開こうとしても、あらゆる方向への動きで痛みが出たり、硬くて動かせなかったりするわけです。

関節包の中でも特に強い症状が初期から出やすいのが肩の前の腱板疎部という部分です。つまり、肩の前に痛みが出ることが多いということです。また、肩関節前方上部は腱板という筋肉で裏打ちされておりません。筋肉に裏打ちされている部位は筋肉とともに常に若干の可動性があり、かつ、筋肉と共同で壁を形成できているので負担が軽減できますが、筋肉で裏打ちされていない部位は可動性が元々乏しく、壁としても単独であり、負担が大きいことも一因と考えています。

上記のような状況であり、肩の痛みに悩まされている方は、まずは整形外科クリニックに受診し、希望があれば当院受診について伺ってみてください。

次に多いのは、腱板断裂による疼痛です。一部は、画像で損傷がはっきりと分からない腱板損傷などは四十肩・五十肩と診断されていることが多いと思います。腱板断裂という言葉は聞いたことがあると思いますが、どういうものかイメージは湧くでしょうか?多くの関節においてインナーマッスルとアウターマッスルというものが共同して運動を制御しております。アウターマッスルは比較的イメージがしやすいと思われます。筋トレなどで肥大して見た目から確認できます。インナーマッスルは外からは意識しづらい深いところにある、基本的には小さな筋肉の事を指します。小さな筋肉ですがインナーマッスルも非常に重要で、関節の安定性や動作の安定性に大きく貢献しています。特に肩関節はインナーマッスルが非常に大切で、インナーマッスルの炎症で疼痛が出現することや、損傷によって可動域が低下したりなど様々な症状を引き起こします。肩のインナーマッスルのことを「腱板」と呼び損傷や断裂をきたす事で症状を呈することとなります。

腱板とは、棘上筋、棘下筋、小円筋、肩甲下筋の四つのことを指します。

最も多い腱板損傷は、加齢による変性に起因する棘上筋断裂です。断裂が生じていても疼痛なく可動域に問題が生じないこともあります。そのため、偶発的に見つかることもあります。棘上筋の機能としては、肩を上げる際に上腕骨頭という骨の回旋を促し、腕を上げる動作をスムーズにすることと、肩峰という骨と上腕骨頭という骨の間で緩衝材としての働きがあると考えられています。そのため、棘上筋が断裂すると挙上が難しくなり、上腕骨頭が上に引き上げられ、肩峰という骨とぶつかり痛みが生じたり、骨が破壊されたりします。

痛みがなくとも、将来の変形性肩関節症のリスクを減らすために断裂があり縫合可能な場合は手術をすべきだと考えております。縫合が困難な場合や変形性肩関節症が生じてしまった場合の治療については後の方で説明します。

四つの腱板がそれぞれ肩関節の運動に関わりながら安定性にも寄与しています。変性断裂は棘上筋が多いことは上でお話ししました。時間が経つと、肩甲下筋にも損傷が広がることもあります。断裂するもう一つの原因は、外傷です。激しい転倒をした後、レントゲンやCT検査などで骨折はないと判断され様子を見ていても、肩の動きが悪く疼痛が持続する場合に、MRIで評価したところ断裂を認めるという経過で診断がつくことが多いものとなります。実際、激しく打撲した場合は、筋肉が腫れてしまうため動きが一時的に悪くなることは少なくありません。そのため、その時点で腱板まで評価をしなければいけないというものではないため、見落とされたというものではありません。外傷による腱板断裂は、受傷の仕方によりどの筋にも生じる可能性があります。受傷機転と疼痛部位、疼痛が生じる動きで断裂部位を検討することが大切です。症状を断裂部位で説明できる状況であれば、手術加療で腱板を修復するべきだと考えます。

外傷後しばらくしても改善しない肩関節周囲の痛みや硬さについては、一度腱板の評価をしていただいた方が良いと思います。

その他に、腱板を障害する可能性があるものは肩をよく使うスポーツにより酷使した場合があります。野球などで障害をきたすことが多いです。現在は、根性で痛みを我慢する時代ではなく投球制限なども設定されるようになったため頻度は減ってきていますが、それでも決して少なくはありません。特に、運動部に所属している学生などはポジション争いに負けまいと痛みを指導者に伝えずに無理をしてしまう場合や、悲しいことですが、まだ根性論を全面に押し出している指導者による過度な練習によるものもあります。投球フォームに由来する損傷も考えられます。肩をよく使う、野球、テニス、バドミントン、水球などの種目での持続する肩の痛みでは、腱板断裂やこの後説明する肩関節内の組織の損傷によるものの可能性が考えられ、評価し必要であれば治療を行うことが望ましいです。

外傷やスポーツで多いものとしては、SLAP(上方関節唇)損傷というものもあります。

上腕二頭筋は二頭というだけあって、短頭と長頭という二つの筋肉で構成されています。主に症状の原因となるのは長頭と呼ばれる筋肉で、この筋肉は関節唇という関節を安定させる組織の上方に付着しています。上腕二頭筋長頭に作用や肩を強打した際に肩関節の上方に痛みが伴い、肩を上げることが困難になります。これがSLAP損傷となります。   こちらも損傷が大きい場合や不安定性が強い場合、疼痛が持続する場合は手術適応となります。損傷が大きくない場合で修復が困難な場合でも、周りの炎症組織、炎症後の組織を掃除することで疼痛が緩和することが多いです。疼痛持続する場合はこちらの可能性を考慮し、MRIなどで評価をすることをお勧めします。

肩関節は可動性が高いため、構造上不安定性が高いものとなります。そのため、強い外力で脱臼することが他の関節より多い部位となります。若年で脱臼する場合は、かなり強い外力で組織の損傷が大きく伴って脱臼するため、反復性肩関節脱臼という不安定性が非常に強い状況に高い確率でなりえます。年齢を重ねるにつれて徐々に関節自体がゆるくなってくるため、脱臼の際に損傷が大きく伴わなくなります。高齢者の脱臼が反復性に移行することは非常に少ないです。不安定性が高く、頻回に脱臼する場合でもスポーツなどを行わず、疼痛も伴わず、あまり生活に支障がない場合は手術などを行わず、その状態の肩と付き合っていく方も少なくありません。しかし、毎回疼痛が伴う場合や、スポーツをする際に不安感が強くパフォーマンスが落ちてしまう場合や、試合の度に脱臼してしまい、毎試合途中退場となってしまうなどがあれば当然手術を行い治した方が良いと思われます。日常生活に支障がある場合も同様に手術で治した方が良いでしょう。

その際に知っておいて欲しいのは、手術で修復した場合も正しい位置に安定化するためのお手伝いをするだけであり、手術後強固に修復が完了しているわけではありません。つまり、術後の後療法(安静とリハビリテーション)が非常に重要となります。術後早期に無理をしてしまい、再脱臼を来してしまうことも少なくありません。そのため、私が手術を行う場合は、十二分に術後の事をお話しします。術後無理をして再脱臼をしてしまうと次の手術自体の難易度が上がり、安定性を十分に担保できなくなる可能性が高くになります。修復困難となることもあり得ます。すぐに復帰したいという希望がある場合は、しばらく休める期間で手術をしましょうと予定を変えることも考えます。

そういった急性(新しい)の障害、もしくは修復可能な慢性(古くからある)の障害については、関節鏡手術で修復することが近年では一般的です。5mm程度の小さな傷を2〜6個ほど(手術によって傷の数は変わります。)開けて、カメラで関節の中を確認しながら処置を行います。必要以上に組織を傷つけないので、昔からある大きく傷を作って行う手術より早期にリハビリテーションなどを行えます。しかし、それらの障害を治療せずにしばらく経過すると、関節の中が破壊されてくることがあります。その状態を変形性肩関節症といいます。

変形性肩関節症は大きく二つに分けられ、腱板断裂した状態で長い時間経過したことで発生する腱板断裂関節症(Cuff Tear Arthropathy ;CTA)という状況と、腱板は問題なく、加齢性変化で関節の中の軟骨がすり減り生じる一次性変形性肩関節症というものになります。特殊なものとしては、アルコールやステロイドなどの影響で血流障害が生じて骨が弱くなり変形を生じる骨頭壊死症やリウマチによる関節症というものもありますが、特殊な状況なのでこちらについての説明は省きます。

変形性肩関節症に対しては手術方法がいくつかあります。近年一般的になったのは人工肩関節置換術です。こちらが一般的になってきた理由としては、リバース型人工肩関節置換術という人工関節が誕生したことと、それが日本でも適応となり手術加療が行われるようになったことが大きな要因です。リバース型人工肩関節が普及する以前にも人工肩関節自体はありましたが、現在ではリバース型と比較して解剖学的人工肩関節という名前で呼ばれる人工肩関節は存在しました。しかし、こちらについては腱板が健在でないと肩関節の可動域が得られず、機能の改善が認められないことが多いものでした。しかし、変形性肩関節症は、腱板断裂後の腱板断裂関節症が最も多いため、以前の術式では機能は度外視し痛くない肩に置換することになっておりました。リバース型人工肩関節について詳細はここでの説明は困難ですが、腱板が断裂した状態でも肩関節の挙上が可能となる構造となっており、こちらの人工関節が出現したことにより人工肩関節の手術を選択することができるようになりました。ただし、リバース型人工肩関節は原則70歳以上という制限が設けられており、手術を行うためには資格が必要となり、どの施設でも相談できるものではありません。当院では私がリバース型人工肩関節置換術の資格を持っているので選択することができます。

なお、以前までの人工肩関節についても使われなくなったのではなく、一次性変形性肩関節症で腱板が機能している場合は選択されます。腱板が機能している場合は、できる限り解剖学的に機能する方ができることが多くなりますので、選択することがあります。状況によって選ぶべき術式が変わります。 私の外来を受診してくださった方で適応がある方は、相談したうえで適切な手術を選択しましょう。

  ・脊椎外科診療   初診日:月曜日   担当:加藤 創太   

当院では、腰部脊柱管狭窄症・腰椎椎間板ヘルニアなどの腰椎疾患や頚髄症性脊髄症などの頚椎疾患について専門的な治療を行っております。

脊椎の変形の状況や症状の強さは患者さんによって全て違うため、手術治療のみを選択するのではなく、患者さんと相談しながら病態や希望に寄り添って治療方針を決めるようにしています。

当科を受診される脊椎疾患で最も多い腰部脊柱管狭窄症について、以下に詳しく説明します。

腰部脊柱管狭窄症 ~腰や足の痛み・しびれを感じたら~

・加齢による骨・関節の病気

高齢になると、体を支える骨や関節が長年の負荷により変形し病気になることがあります。

代表的な病気として以下のものがあります。

*変形性膝関節症

膝の関節が変形して、歩行や階段の昇り降りがつらくなったり、正座ができなくなったりします。

*変形性腰椎症

腰の骨が変形して、動くときに常に腰が痛くなったり腰が曲がったりします。

どちらも生活に支障をきたし、健康寿命(自分で自立した生活ができる期間)に影響する病気です。若返りができないのと一緒で、これらの病気は根本的に治ることはありません。

・腰部脊柱管狭窄症とは

加齢による腰椎の変形(変形性腰椎症)がベースとなります。

背骨の中には脳からつながる神経の通り道(脊柱管)がありますが、腰椎が変形すると神経の通り道である骨のトンネルも変形してしまい、神経が圧迫されてしまうことがあります。これが腰部脊柱管狭窄症です。

・腰部脊柱管狭窄症の症状~腰や足の痛み・しびれ~

腰椎のなかを通っている神経は足につながるため、腰部脊柱管狭窄症にかかると足に痛みやしびれが出ることがあります。神経の圧迫のされ方により、両足に症状が出る場合も片足だけ症状が出る場合もあります。

足の痛み・しびれがでる病気には他にもこのような病気があります。

*閉塞性動脈硬化症(足の動脈が詰まる)

*末梢神経障害(糖尿病などの病気で神経そのものがダメージを受ける)

腰部脊柱管狭窄症は腰椎で神経が圧迫される病気なので、腰の姿勢によって神経の圧迫の度合いが変わり症状の強さが変わることが多いです。腰を伸ばして歩いたり作業をしていると神経の圧迫がひどくなり症状が悪化し、腰を丸めて休むと神経の圧迫が緩んで少し楽になるため、歩いたり休んだりを繰り返すのが典型的な症状で、間欠跛行といいます。

さらに病状が悪化すると、神経麻痺が起きてしまい足の力が入りづらくなったり排尿障害の症状が出てきます。

*腰部脊柱管狭窄症の診断方法

腰や足の痛み・しびれを感じたらまずは整形外科かかりつけ医を受診することをおすすめします。

症状の問診や診察所見から腰部脊柱管狭窄症を疑ったら、画像検査をおこないます。

一般的にはまず腰椎レントゲン撮影をおこないます。レントゲンで年齢による腰椎の変形(変形性腰椎症)などの確認ができますが、神経そのものはレントゲンでは写りません。

MRI検査をおこなうと、神経が圧迫される状況が確認でき、腰部脊柱管狭窄症の診断がつきます。

実際の診察では、MRIは予約検査となることが多いのでまず診察とレントゲン、その後腰部脊柱管狭窄症を疑う場合はMRI検査の予約となることが多いです。

MRIはかかりつけ医から当院に医療連携の形で依頼をいただき、当院で撮影することができます。

・腰部脊柱管狭窄症の治療方法

加齢による病気なので、若返りができないのと一緒で、自然に根本的に治ることはありません。根本的に状況を改善するためには、手術で背骨のトンネルを削って神経の圧迫を解除する必要があります。

手術は負担やリスクをともなうため、まずは手術以外の治療からはじめることが多いです。

・保存治療(手術以外の治療)

*薬による治療(痛み止めの薬や神経の血流をよくする薬など)

痛み止めの薬は副作用もあるため使い過ぎに注意が必要です。この10年で神経痛を抑える新しい薬が増えています。

*ブロック注射(硬膜外ブロックなど)

針を刺す痛みをともなう代わりに、神経が圧迫されている部分に直接薬を届けられます。ブロック注射治療を本格的におこなう場合は、専門のペインクリニック外来へ紹介することもあります。

*装具療法、物理療法など

コルセットで腰にかかる負担を減らしたり、リハビリなどで腰の筋力を鍛えて変形の進行を予防します。

手術以外では脊柱管を拡げることができないため、症状がよくなるとは限りません。

・手術治療

腰部脊柱管狭窄症を放置すると神経のダメージが悪化する可能性があるため、手術のメリットデメリットを天秤にかけて、手術をするべきか決める必要があります。かかりつけの整形外科から当院の様な手術もできる総合病院を紹介してもらい、治療方針を相談することをお勧めします。

手術方法としては、大きく分けて腰椎の一部を削って神経の圧迫を解除する「椎弓切除術」と、さらに金属のスクリューなどを挿入して腰椎を固定する「脊椎固定術」の2種類があります。どちらの手術が良いかについては腰椎の変形の度合いや神経圧迫の程度で変わるので、検査の結果で主治医と相談し決定する事になります。

当院では内視鏡を用いて神経の圧迫を解除する「内視鏡下椎弓切除術」に取り組んでおります。内視鏡を用いると手術の傷やダメージを最小にすることができ、結果、手術による痛みが減り入院期間も短くなります。最短で手術後2日目で退院可能です。内視鏡手術が可能かどうかは患者様の腰椎の状態によって決まるので、一度ご相談ください。

よくある質問

・手術してもよくならないのではないか?より悪くなってしまうのではないか?

手術で背骨のトンネルを削って神経の圧迫をとることはできますが、すでに受けてしまった神経のダメージは改善できません。そのため、手術をしても100%はよくならないことが多いです。

逆に腰部脊柱管狭窄症を放置して神経のダメージが悪化すると、より治りづらくなってしまいます。そのため、早めに手術をするメリットもあります。

10年前と較べて手術術式も進化しており、内視鏡手術など負担の少ない治療も増えてきています。逆に背骨の変形が強い場合は金属での固定を追加しなければならない場合もありあります。術式選択や手術のメリットデメリットについて主治医と相談するとよいでしょう。

・手術すれば二度と悪くならないのか?

残念ながらそうではありません。手術でできるのは「今悪いところ」のトンネル工事です。背骨のパーツが若返るわけではありません。手術後に時間がたてばまた悪くなることは当然あります。その場合また手術をするか、薬などでの治療をおこなうか検討することになります。再発を予防するために、なるべく腰に負担をかけない生活を心がけることが大切です。

・日常生活で何に気をつければよいか?

腰に負担をかけない生活を心がけることと、腰を支える筋力を維持するために適度に運動することが大事です。

和式の生活スタイルよりも、ベッドや椅子を使用した生活スタイルの方が腰や膝にかかる負担が減らせます。草むしりや長時間運転など腰に負担がかかる動作は控えるとよいでしょう。

運動は無理せず、腰に負担がかからない範囲での全身運動がよいでしょう。水中ウォーキングは体重の負担を減らせて、水の適度な抵抗のなかでの全身運動となるためお勧めです。

自分で運動するのが難しい場合は、デイサービスなどを利用し運動する機会をつくるのが望ましいです。

*医療連携

腰や足の痛み・しびれを感じたら、まずは通いやすいかかりつけの整形外科をつくって受診することをお勧めします。そのうえで精査や手術など大きな治療が必要となったら当院の様な総合病に紹介してもらい、また落ち着いたらかかりつけに戻って治療を継続するとよいでしょう。

  ・膝関節外科診療   初診日:水曜日   担当:古宮 智貴

当院は、3次救急指定のため、急性期の膝の外傷も幅広く対応しておりますが、慢性疾患である変形性膝関節症に対しても積極的に手術加療を行っています。

変形性膝関節症は、主に体重や加齢の影響により膝関節の軟骨がすり減り、膝の変形や痛みを生じるようになる病気です。加齢以外にもスポーツ・外傷(骨折・半月板損傷など)・肥満が原因になることもあり、女性に多くみられます。

治療としては、保存療法と手術療法がありますが、まずは徹底した保存治療が大事になります。保存治療としては、痛み止めの内服や関節注射(ヒアルロン酸)をします。

装具療法(足底板)・物理療法(膝を温める)・運動器リハビリテーション(大腿四頭筋訓練・膝の可動域訓練)も重要です。

当院には開業医の先生方から紹介いただいた患者さんが多数いますが、すぐに手術ということではなく、まずは徹底した保存治療が行えていたか再確認するとともに、手術がベストな治療か検討します。

保存治療が無効の場合は手術治療を選択します。手術には関節鏡・骨切り術・人工関節置換術があります。年齢や変形性膝関節症の進行度合いによって選択をします。

主に若年の変形性膝関節症では、高位脛骨骨切り術や関節鏡で逸脱した内側半月板の内方化・内側半月板後根断裂に対する縫合術を単独、もしくは併用して行い変形進行の抑制に努めています。

高度変形症例に対しては人工関節置換術の適応になりますが、ナビゲーションを用いた正確な骨切りや術後の痛みを少なくするために関節周囲多剤カクテル注射を行っており、大きな効果を得られています。また、人工関節といっても一部だけの置換(単顆置換術)を選択する場合もあります。

今後、当院では、再生医療にも力を入れていく予定です。

現在、注目を浴びている再生医療ですが自家培養軟骨移植術・PRP(多血小板血漿)療法・APS(自己タンパク質溶液)療法などがあります。

当院では、保険診療となる自家培養軟骨移植術のみ現時点で行っています。ただし、適応が限られているため、全員が行えるものではありませんので一度ご相談ください。

今後、PRP療法も導入予定となっておりますので、患者さんにとってより選択肢が増えた治療を展開できるものと確信しています。

当院では、スポーツ損傷にも積極的に取り組んでいます。スポーツ損傷とは、強い外力により生じたスポーツ外傷と、繰り返す動作で生じるスポーツ障害とに分けられますが、当院では、手術が必要となることが多いスポーツ外傷に対し専門的な手術を行っています。

膝では、前十字靭帯損傷や半月板損傷が主な疾患となります。

前十字靭帯損傷では、MRIで損傷の有無を確認はしますが、日常生活レベルで膝の不安定感や膝崩れを感じる場合は基本的には手術の適応になると考えております。

スポーツをされない方・高齢の方などは手術をしない保存治療を選択することもあります。

手術は様々な再建材料がありますが、当院では半腱様筋腱を用いた再建術を行っております。術後はスポーツに復帰するまで約6か月のリハビリが必要です。

半月板損傷は、前十字靭帯損傷に合併することが多いですが、単独でも生じます。膝の曲げ伸ばし時にひっかかりを感じ、場合によっては膝を曲げ伸ばしできなくなるロッキングという状態になることがあります。

治療としては、運動療法・関節注射(ヒアルロン酸)などの保存治療又は関節鏡での手術治療になります。

以前は半月板を切除することがスタンダードでしたが、長期的にみると変形性膝関節症に進行しやすくなると指摘されており、現在では温存することが重要視されています。

損傷の部位によってはどうしても切除でないと対応できない場合は切除しますが、最小限に留め、なるべく縫合に努めています。

術後はスポーツに復帰するまで縫合術で約3か月から6か月のリハビリが必要です。

当院では、膝だけでなく、肩関節脱臼や腱板断裂などのスポーツ外傷に対しても手術治療を行っておりますので、ぜひ一度御相談ください。

施設認定

  • 日本整形外科学会専門医研修施設
  • 日本手外科学会 基幹研修施設

スタッフ

整形外科部長兼リハビリテーション科部長

加藤 創太

卒業年
H13年卒
資格
日本整形外科学会認定専門医
日本整形外科学会認定脊椎脊髄病医
日本整形外科学会認定リウマチ医
日本整形外科学会認定運動器リハビリテーション医
専門分野
脊椎脊髄外科 整形外科全般

副病院長兼医療安全管理部長兼患者総合支援部長兼麻酔科部長兼形成外科部長兼手術センター長兼医療安全管理センター長兼患者総合支援センター長

杉木 正

卒業年
H7年卒
資格
医学博士
日本整形外科学会認定専門医・指導医
日本手外科学会認定専門医・指導医
日本整形外科学会認定脊椎脊髄病医
日本整形外科学会認定リウマチ医
日本整形外科学会認定運動器リハビリテーション医
臨床研修指導医
身体障害者福祉法第15条指定医(肢体不自由)
慶應義塾大学医学部客員講師(整形外科学)
専門分野
手外科 上肢 整形外科全般

主任医長

古宮 智貴

卒業年
H20年卒
資格
日本整形外科学会認定専門医
日本整形外科学会認定スポーツ医
日本整形外科学会認定運動器リハビリテーション医
専門分野
膝関節外科 スポーツ整形 整形外科全般

医長

歌島 淳

卒業年
H27年卒
資格
日本整形外科学会認定専門医
専門分野
肩関節外科 上肢 整形外科全般

医長

小野 匠

卒業年
H29年卒
資格
日本整形外科学会認定専門医
専門分野
膝関節外科 整形外科全般

医師

吉田 宏太朗

卒業年
H31年卒
専門分野
整形外科全般

医師

城田 晃佑

卒業年
R2年卒
専門分野
整形外科全般

医師

影嶋 洸太朗

卒業年
R2年卒
専門分野
整形外科全般

医師

山本 将大

卒業年
R3年卒
専門分野
整形外科全般

医師

飯島 柚香

卒業年
R4年卒
専門分野
整形外科全般

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